「打撃指導を希望したのは、話をいただいた時点で、自分がやヤンキースという組織の力になれる唯一の仕事だと思ったから。僕にできるのはこれくらいかなと。
フロントの仕事もやろうと思えば自分なりにできるとは思うが、これまでの経験を一番生かせるのは、将来のある選手たちに打撃について伝えることだと思った。
なおかつ現在は現場からもう少し踏み込んだ編成に関わっている。
例えばよくあるのは『ヒデキだったらどの選手をキープしたい』とキャッシュマンGMに判断を
求められること。どこまで組織の力になれているかは分からないが、そういう判断は
選手を定期的に見ていないとできない。そこには責任が伴う。自分にとって貴重な経験をしている。
「指導する立場となって感じるのは、悪い点を指摘するのは簡単だということ。
打撃を見ればすぐ気付くし『こうすればいいのに』と言える。
でも指摘されてそれを直すすべを選手が持っているかと言ったら、持っている選手は
ほとんどいない。変わる必要性を選手にどう気付かせ、納得させて改善するか。
コーチが見て良くなったと評価できる形で、かつ選手自身の感覚でもいいと思えるものを
導き出さなければいけない。指導するうえで一番難しい部分だ。
指摘することと、変わるように導いてやることは全く別で、両方やって初めて指導者と言える。
『こうなっているから、こうしろよ』と指摘するだけの指導者なら、はっきり言って簡単だ。
本当に賢い選手はいるのかもしれないけど、普通は『じゃあどうしたらいいの』となる。
この仕事を3年間やって難しさを痛感している。納得させて本人が変わるように持っていく。
それは日本語を駆使したとしても難しい。自分が突き当たっている壁かなと思う」